第35回「町並みの作法(ミニ戸建て編)
(H18.5.19)
この2〜3年、京都の街中にカラフルなミニ戸建てが、急激に建ちはじめました。
京都では、東京なら小ぶりのマンションが建ちそうな土地が空けば、必ずといっていいほど、ミニ戸建てが建売住宅として建っていきます。
マンションと変わらない値段で、しかも駐車場もあり、厄介な集合住宅の問題もないことから、一戸建て思考の消費者にとても人気があります。
この写真の住宅など、東京などでは、何の問題もない、ミニ戸建てとしては上質の部類に入るデザインです。
しかし、ここ京都ではどうでしょう。
何か違和感がありませんか?
違和感どころか、京都の町並みのよさを壊してはいないでしょうか。
実は、現在の京都市内のまちづくりの問題点の一つが、この「ミニ戸建てのしつらえ」なのです。
昔の京都の住宅は、写真などで有名な立派な町屋づくりのお宅は極一部で、多くの町衆は、町屋風の長屋に住んでいました。
長屋は、地主が同じで、建てた大工さんも同じですから、お隣同士が同じデザインで、住んでいる住人にとって見れば、それが貧しさの象徴とも感じてしまう時代もありました。
ところが、実は、その「同じ」が、京都の町並みの統一感と美しさを生んできたのです。
戦後、高度成長期後半からバブル経済時代にかけて、それら長屋は住人の高齢化と伴に、地主の相続等の都合で取り壊され、空き地になり、コイン式駐車場を経て、ここに来て、このようなミニ戸建てが、一気に建ち始めたというわけです。
4年ほど前、東本願寺の裏手にある素敵なミニ戸建てを見つけました。
小刻みな外観テイストを払拭するため、外装全面を、京都ならではの、格子のしつらえにしてあります。
一見、ミニ戸建てではなく、一軒の大きな住宅にも見えますが、実は、中は列記とした5軒ほどのミニ戸建てなのです。
実に素敵な「しつらえ」だと思いませんか!
実に、「作法」が感じられる設計だと思いませんか!
これだと、ミニ戸建て特有の「細切れ感」もなく、されとて、昔の人が感じていた長屋の「貧弱さも」なく、町並みを逆によくしている「しつらえ」ではないでしょうか。
さすが京都の建築家と感心するのですが、その後、一向にこの手法のミニ戸建ては、普及していません。
何故なのでしょう。
そこには、売主のポリシーの問題とともに、買主である消費者の誤解(知識不足)があると思います。
購入時は、「隣と同じデザインは嫌だ」という消費者が意外と多いのです。
まさしく、昔の長屋のイメージを頭に浮かべ、「一戸建て=分譲物件」と「長屋=賃貸物件」という発想をお持ちなのかもしれません。
だとすれば、その考えは、購入して2年ほど経てば、間違いだったことが分かります。
ご近所と外観で統一感がある町並みの方が、落ち着きがあり、リッチな気分になることが分かってくるからです。
是非、住宅をお求めの際は、間取りや設備だけでなく、多くの街並みを観察してから決断して下さい。
きっと、10年後20年後にその違いが分かってくると思いますよ。
消費者が賢くなれば、売主は考えるようになり、町は美しくなっていきます。
よくご自分の町を観察してみてください。
住宅や建物が新築される度に、町が貧しくなっていませんか?
